13. オーステナイト中の炭素の拡散定数計算(Agren式)ワークフロー

13.1. 概要

本ワークフローはAgrenの式によりオーステナイト中の炭素の拡散定数を計算するワークフローである。

13.1.1. Agrenの式

文献 1 Table 1の炭素の固相における拡散係数の式を実装したものであり、 拡散定数の計算には、参考文献 2 の式(6) より引用したAgrenの式 (8) を利用している。

(8)\[\begin{split}& D^{S}_{C} = 4.53 \times 10^{-7}\{1 + \frac{8339.9y(1-y)}{T}\} \\ & \times \exp(-(\frac{1}{T}-2.221 \times 10^{-4})(17767-26436y))\\ & y = \frac{x}{1-x}\\ & x: オーステナイト相の炭素のモル分率\\ & T: 温度[K]\\\end{split}\]
1

[小野 幸徳] Fe-Cr-C合金の初晶オーステナイトの凝固におけるクロムおよび炭素の分配挙動の解析 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinstmet1952/57/4/57_4_432/_article/-char/ja/

2(1,2)

[J. Agren] A revised expression for the diffusivity of carbon in binary Fe-C austenite https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0036974886903844?via%3Dihub

13.1.2. 検証

ワークフローの出力値の妥当性を検証するため、式 (8) の出典 2 のFig1と比較する。 入力した条件は以下の通りである。

温度: 1023K, 1073K, 1123K, 1173K, 1223K, 1400K, 1468K 炭素の質量分率: 0.01, 0.02, 0.04, 0.06, 0.08, 0.10

出典( 図 134 )と、本ワークフローによる計算の結果( 図 135 )を比較すると、概ね一致することが分かる。

../_images/fig_ref.png

図 134 式の出典fig1

../_images/fig_test.png

図 135 本ワークフローによる計算の結果

13.2. ワークフローの説明

13.2.1. ワークフロー

Agrenの式によりオーステナイト中の炭素の拡散定数を計算する。 ワークフローは 図 136 の通りである。

../_images/wf1.png

図 136 オーステナイト中の炭素の拡散定数計算(Agren式)ワークフロー

13.2.2. ツール

このワークフローでは一つの「オーステナイト中の炭素の拡散定数計算(Agren式)」ツールしか利用しないため、 ワークフローとツールの入出力は同一である。

  1. オーステナイト中の炭素の拡散定数計算

    オーステナイト中の炭素の拡散定数を計算する。図は 図 136 同様である。

    • 入力ポート

      • ポート名:オーステナイト相のC_モル分率
        オーステナイト相の炭素のモル分率。
        例) 0.10% → 0.01
        0.0237385
        
      • ポート名: 温度

        任意の温度。単位は[K]。

        1073.15
        
    • 出力ポート

      • ポート名:拡散定数

        定常クリープ速度。単位は \(m^{2}s^{-1}\)

        2.2585953646085224e-12
        

13.2.3. 入力ファイル

このワークフローの入力ファイルは ツール に示す入力ポートのファイル全てである。 入力ファイルはテキストエディタなどで作成する。具体的な作成例を ワークフロー実行 に示す。 サンプル入出力ファイル ダウンロードはこちら (html版のみダウンロード可能)

13.3. ワークフロー実行

13.3.1. 前提条件の設定と変数の値の決定

本例では入力条件を 表 9 のように定める。

表 9 前提条件一覧

入力ポート名

単位

オーステナイト相のC_モル分率

0.0237385

温度

1073.15

K

13.3.2. 入力ファイルの作成

入力ファイルはテキストエディタなどで作成する。 以下にオーステナイト相のC_モル分率の入力ファイルを作成する例を示す。

  1. Windowsのメモ帳を開く(エディタなら何でもよい)

  2. 入力値を記述

    ここでは 前提条件の設定と変数の値の決定 で決定したオーステナイト相のC_モル分率="0.0237385"を入力

    ../_images/memo.png

    図 137 メモ帳での入力ファイル作成例

  3. ファイルを保存

    ファイル名は任意。ただし半角スペースを使用してはならない。文字コードは"UTF-8"のみ対応する。

  4. 前提条件の設定と変数の値の決定 で決定した変数の値それぞれについて、1~3の手順でファイルを作成する。

13.3.3. 実行方法

ワークフローに 入力ファイルの作成 で作成した入力ファイルを投入し、オーステナイト中の炭素の拡散定数計算の計算結果を取得する。

  1. ワークフロー一覧画面( 図 138 )で ワークフロー名 [オーステナイト中の炭素の拡散定数計算(Agren式)] リンクをクリックして、ワークフローメタ情報画面に遷移する。

    ../_images/wf_list.png

    図 138 ワークフロー一覧画面

  1. ワークフローメタ情報画面で、画面の右上にある [ワークフローを実行] ボタンをクリックするとワークフロー実行画面に遷移する( 図 139 )。

    実行パラメータ(入力ファイル)を設定後、[実行] ボタンをクリックすることでワークフローが実行される。( 図 140 )

    ../_images/wf_run1.png

    図 139 ワークフローメタ情報画面

    ../_images/wf_run2.png

    図 140 ワークフロー実行画面

  1. ワークフローが実行されるとラン一覧に実行したワークフローが表示される。( 図 141 )

    ランの実行が正常終了すると実行結果のダウンロードが可能になる。

    ../_images/run_running.png

    図 141 ラン一覧画面(実行完了)

13.3.4. 実行結果の確認方法

実行結果をダウンロードする。

  1. ラン一覧から実行結果をダウンロードしたいランIDをクリックし、ラン詳細画面に遷移する( 図 142 )。

    ラン詳細画面の [ダウンロード] ボタンをクリックすると計算結果ファイルダウンロードダイアログに遷移する( 図 143 )。

    ../_images/run_detail.png

    図 142 ラン詳細画面

  2. 計算結果ファイルダウンロードダイアログの [全ての実行結果をダウンロードする]ラジオボタンをチェックし、[ダウンロードする] ボタンをクリックする。

    ダウンロード確認メッセージが表示される場合、「ダウンロード」ボタンをクリックする。

    ../_images/download.png

    図 143 計算結果ファイルダウンロードダイアログ

3.ダウンロードした実行結果ファイルは圧縮されており、"out.zip"というファイル名になっている。

ファイルを解凍すると「ワークフローID名」のフォルダの下に「(ワークフローID+)ツール名」のフォルダが存在し、ツールの計算結果ファイルが格納されている( 図 144 )。

out
 ├ W000110000000504
    ├ input
    ├ W000110000000504_オーステナイト中の炭素の拡散定数計算_Agren式_01
       ├ 拡散定数
../_images/output_file.png

図 144 拡散定数