15. 定常クリープ速度計算ワークフロー¶
15.1. 概要¶
本ワークフローはDornの式により定常クリープ速度を計算するワークフローである。
15.1.1. Dornの式¶
定常クリープ速度の計算には、参考文献 1 の式(1) より引用したDornの式 (10) を利用している。
- 1(1,2)
Creep Deformation of Type 2205 Duplex Stainless Steel and its Constituent Phases Heeyong Park, Bruno Charles De Cooman https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational/54/4/54_945/_article
15.1.2. Dornの式の各変数¶
Dorn式 (10) の各変数値は温度[K]、応力[MPa]、鋼種の属する相(Ferrite, Austainite, DSS 2 のいずれか)を元に、 表 10 表 11 表 12 より求める。具体例については ワークフロー実行 に記載する。これらの表は参考文献 1 のTable2~4より引用した。
- 2
Duplex Stainless Steel
Mechanism |
D |
n |
p |
---|---|---|---|
Lattice diffusion creep |
\(D_{L}\) |
1 |
2 |
Grain boundary diffusion creep |
\(D_{GB}\) |
1 |
3 |
Grain Boundary Sliding (Superplasticity) |
\(D_{L}/D_{GB}\) |
2 |
1/2 |
Viscous glide |
\(D_{L}\) |
3 |
0 |
Dislocation climb |
\(D_{L}\) |
5 |
0 |
Parameter |
Value |
||
---|---|---|---|
Phase |
Ferrite |
Austenite |
Duplex |
Lattice diffusion coefficient
\(D_{0L}\), \(m^{2}/s\)
|
\(1.9 \times 10^{-4}\) |
\(1.8 \times 10^{-5}\) |
\(3.5 \times 10^{-5}\) |
Grain boundary diffusion coefficient
\(\delta D_{0GB}\), \(m^{3}/s\)
|
\(1.1 \times 10^{-12}\) |
\(7.5 \times 10^{-14}\) |
\(1.7 \times 10^{-13}\) |
Activation energy for lattice diffusion
\(Q_{L}\), kJ/mol
|
239 |
\(270\) |
\(270\) |
Activation energy for grain boundary diffusion
\(Q_{GB}\), kJ/mol
|
174 |
\(159\) |
\(163\) |
Grain size
D, μm
|
27.400 |
\(1.050\) |
\(0.836\) |
Atomic volume
\(\Omega\), \(m^{3}\)
|
\(1.18 \times 10^{–29}\) |
\(1.21 \times 10^{-29}\) |
\(1.20 \times 10^{-29}\) |
Burger’s vector
b, m
|
\(2.48 \times 10^{–10}\) |
\(2.58 \times 10^{-10}\) |
\(2.53 \times 10^{-10}\) |
Shear modulus
G, GPa
|
\(\frac{250.480−0.103T}{2.925}\) |
\(\frac{197.398−0.063T}{2.620}\) |
\(\frac{209.7115−0.072T}{2.809}\) |
Elastic modulus
E, GPa
|
250.480 – 0.103T |
\(197.398 – 0.063T\) |
\(209.7115 – 0.072T\) |
Poisson ratio
\(\nu\)
|
0.4625 |
\(0.310\) |
\(0.40425\) |
Melting temperature
\(T_{M}\), K
|
1769 |
\(1723\) |
\(1733\) |
Phase |
D |
n |
p |
A |
Mechanism |
Stress range at 1323 K |
---|---|---|---|---|---|---|
Ferrite |
\(D_{L}\) |
1 |
2 |
32.49 |
Lattice diffusion creep |
< 2.37 MPa |
\(D_{L}\) |
3 |
0 |
0.73 |
Viscous glide |
> 2.37 MPa |
|
Austenite |
\(D_{L}\) |
1 |
2 |
29.59 |
Lattice diffusion creep |
< 26.4 MPa |
\(D_{L}\) |
5 |
0 |
\(5 \times 10^{5}\) |
Dislocation climb |
> 26.4 MPa |
|
DSS |
\(D_{L}\) |
1 |
2 |
31.12 |
Lattice diffusion creep |
< 2.86 MPa |
\(D_{L}\) |
2 |
1 |
\(1.17 \times 10^{10}T/E\) |
Grain Boundary Sliding (Superplasticity) |
> 2.86 MPa |
表 10 の \(D_{L}\) \(D_{GB}\) はそれぞれ以下の式 (11) 式 (12) から求められる。
15.2. ワークフローの説明¶
15.2.2. ツール¶
このワークフローは「定常クリープ速度計算」ツールのみで構成されるため、 ワークフローとツールの入出力は同一である。
- 定常クリープ速度計算
定常クリープ速度を予測する。図は 図 154 同様である。
入力ポート
- ポート名:応力
任意の応力。単位は[MPa]
10
- ポート名: 試験温度
任意の試験温度。単位は[K]。
1323
- ポート名:Dorn式の係数A
Dorn式の係数A、表 12 より温度1323[K]のときの応力と相から決定する。
29.59
- ポート名:Dorn式の係数n
Dorn式の係数n、表 12 より温度1323[K]のときの応力と相から決定する。
1
- ポート名:Dorn式の係数p
Dorn式の係数p、表 12 より温度1323[K]のときの応力と相から決定する。
2
- ポート名:バーガースベクトル
バーガースベクトル。 表 11 のパラメータ Burger's vector より、相に応じて決定する。
2.58e-10
- ポート名:剛性率
剛性率。 表 11 のパラメータ Shear modulus より、相に応じて決定する。
43.5301
- ポート名:拡散係数
拡散係数。
3.9386e-16
- ポート名:結晶粒径
結晶粒径。 表 11 のパラメータ Grain size より、相に応じて決定する。
出力ポート
- ポート名:定常クリープ速度
定常クリープ速度。単位は \(s^{-1}\) 。
0.0000993876
15.2.3. 入力ファイル¶
このワークフローの入力ファイルは ツール に示す入力ポートのファイル全てである。
入力ファイルはテキストエディタなどで作成する。具体的な作成例を ワークフロー実行 に示す。
サンプル入出力ファイル ダウンロードはこちら
(html版のみダウンロード可能)
15.3. ワークフロー実行¶
15.3.1. 前提条件の設定と変数の値の決定¶
本例では前提条件を 表 13 のように定め、 表 10 表 11 表 12 より変数の値を決定する。
条件 |
値 |
単位 |
---|---|---|
温度 |
1323 |
K |
応力 |
2 |
MPa |
相 |
Ferrite |
拡散係数の決定
- 拡散係数の計算
式 (11) の変数に値を代入し、拡散係数を計算する。 表 13 より、相は"Ferrite" であるから 表 11 より \(D_{0L}\) \(Q_{L}\) はそれぞれ、 \(1.9 \times 10^{-4} m^{2}/s\) 、239 kJ/mol と決定される。 気体定数は \(8.31446262 \: m^{2} \: kg \: s^{-2} \: K^{-1} \: mol^{−1}\) 、温度は 表 13 より、1323Kとして、それぞれ代入する。
\[\begin{split}D_{L} &= 1.9 \times 10^{-4} \exp( -239 \times 10^{3} / 8.31446262 \times 1323) \\ &=6.96223e-14\end{split}\]表 16 拡散係数¶ 変数
値
拡散係数
6.96223e-14
以上で、ワークフロー実行に必要な値が揃った。
15.3.2. 入力ファイルの作成¶
入力ファイルはテキストエディタなどで作成する。 以下にDorn式の係数Aの入力ファイルを作成する例を示す。
Windowsのメモ帳を開く(エディタなら何でもよい)
- 入力値を記述
ここでは 前提条件の設定と変数の値の決定 で決定したDorn式の係数A="32.49"を入力
図 155 メモ帳での入力ファイル作成例¶
- ファイルを保存
ファイル名は任意。ただし半角スペースを使用してはならない。
前提条件の設定と変数の値の決定 で決定した変数の値それぞれについて、1~3の手順でファイルを作成する。