1. 組成分解、組成結合予測モジュールの使い方

1.1. 概要

MIntシステムのワークフローは入力に様々な形式を指定できる。 かたやGPDBなどで組成単体をスカラー量にした値を格納して置かないと後々GPDBから大量の計算結果をもってきて機械学習などにかける際に様々な値が混在したファイルでは説明変数として使えない。 例えば、ワークフローの実行にパラメータとして使用するいくつかの合金組成をファイルとしてまとめて扱っている入力があると、計算後の大量の結果を機械学習なのでその値を使いたい場合、取得した後に各元素の値をパースして切り出す必要がある。 この様な場合、一旦各組成単体に分解して各組成を出力する予測モジュールと、 その各組成の出力を入力として、 元のファイルに戻すことができる予測モジュールを使用することで、計算終了後に分解した組成値が単独でGPDBに格納されているので、後々計算結果を取り出したときにパースして切り出す必要が無い。 こうすることでこれらの予測モジュールまたはワークフローを組み込んだワークフローは入力された組成が1つずつGPDBの入力または出力ポート名として出現し、 機械学習の説明変数として使用可能になる。 他にもこのように内容を分解、結合する予測モジュールを用意した。

現在用意してある組成分解結合予測モジュールは以下の通り。

  • 合金組成情報

  • 合金組成生成

  • クリープ材料特性分解

  • クリープ材料特性結合

1.2. 予測モジュール説明

各予測モジュールの概要と概略図を示す。入力ファイルのフォーマットについてはツールの説明で行う。

1.2.1. 合金組成情報

いくつかの組成の値が設定された特定のフォーマットのファイルから組成値単体を出力ポートへ出力する。

../_images/decompostion_module.png

図 1 合金組成分解の予測モジュール図

1.2.2. 合金組成生成

いくつかの組成を入力とし、特定のフォーマットのファイルへ変換した後、そのファイルを出力ポートへ出力する。

../_images/compostion_module.png

図 2 合金組成結合の予測モジュール図

1.2.3. クリープ材料特性分解

クリープ性能試験ワークフローに用いられる、XML構造によるクリープ材料特性の定義から各項目を分解して出力ポートへ出力する。

../_images/creep_material_spec_decompostion_module.png

図 3 クリープ材料特性分解の予測モジュール図

1.2.4. クリープ材料特性結合

クリープ性能試験ワークフローに用いられるXML構造によるクリープ材料特性のファイルをXMLを構成する各値から元のXMLを生成し出力ポートへ出力する。

../_images/creep_material_spec_compostion_module.png

図 4 クリープ座色湯特性結合の予測モジュール図

1.3. ツールの説明

1.3.1. 合金組成情報

いくつかの入力フォーマットのファイルより、合金の組成成分を分解する。機能は以下の通り

  • 入力ファイル中の元素量を、組成データ単位情報の指定により、質量分率、質量百分率、原子分率、原子百分率の各値に変換して出力する。

  • 入力ファイル中に現れる元素のみ出力ポートに出力される。現れなかった元素名のポートの内容は空となる。

  • 変換は以下の条件で行われる。
    • 組成データタイプが無指定(質量分率が指定されたことになる)または質量分率が指定されたとき、質量百分率、原子分率、原子百分率に変換される。

    • 組成データタイプに質量百分率が指定されたとき、質量分率、原子分率、原子百分率に変換される。

    • 組成データタイプに原子分率が指定されたとき、質量分率、質量百分率、原子百分率に変換される。

    • 組成データタイプに原子百分率が指定されたとき、質量分率、質量百分率、原子分率に変換される。

  • 質量分率、質量百分率から原子分率、原子百分率の変換が行われるためには、合金種別にバランス量となる元素名が指定されるか、指定されない場合Fe(鉄)をバランス量元素として計算が行われます。

../_images/decompostion_module.png

図 5 合金組成分解の予測モジュール図

入力ファイル:
ポート名:合金種別
合金のバランス量となる金属を指定する。無指定の場合Fe(鉄)が指定されたものとして原子分率への変換などが行われる。
../_images/decomposition_input_kind_of_allowy.png

図 6 入力ファイル「合金種別」バランス量鉄(Fe)指定の時の例

入力ファイル:
ポート名:組成データ
計算に必要な合金組成データがまとめて記入してあるファイル。いくつかの種類に対応する。後述の組成データタイプで種別を指定する。複数のデータタイプ、単位情報の混在は不可である。1行目はヘッダーとし、各元素のカラムは元素記号を指定する。
../_images/decomposition_input_matnvi.png

図 7 入力ファイル「組成データ」の例(matnaviタイプ)

入力ファイル:
ポート名:組成データタイプ
入力ファイル「組成データ」がどのような種類のファイルであるかを指定する。
../_images/decomposition_input_file_type.png

図 8 入力ファイル「組成データタイプ」の例

データタイプは以下のどれかを指定する。

  • cct_matnavi:図 7 の様なCSV形式のファイル。1行目は元素名のインデックス、2行目に対応する組成値となる。

  • zeisei:実装予定。脆性破壊ワークフローで利用されるエクセルの記述。

  • fe_composition:cct_matnaviと同等だが、バランス量が鉄(Fe)である。原子分率、原子百分率変換処理は実装予定のため、原子分率、原子百分率は変換対象外となる。単位情報には"mass_fraction"または"mass_percent"のみ指定可能。

入力ファイル:
ポート名:組成データ単位情報
組成データに指定されている各元素の単位を指定する。
../_images/decomposition_input_unit_type.png

図 9 入力ファイル「組成データ単位情報」の質量分率を指定した時の例

単位情報は以下のどれかを指定する。

  • mass_fraction:質量分率(指定元素がバランス量含めて合計1となる組み合わせ)

  • mass_percent:質量百分率(指定元素がバランス量含めて、合計100となる組みあわせ)

  • atomic_fraction:原子分率

  • atomic_percent:原子百分率

入力ファイル例
  • 組成データタイプがcct_matnaviの場合

    • ファイル形式:csvファイル

    • 1行目:項目名

    • 2行目:値

../_images/comp_dat_s1.png

図 10 入力ファイル例 組成データタイプがcct_matnaviの場合

  • 組成データタイプがfe_compositionの場合

    • ファイル形式:csvファイル

    • 1列目:項目名

    • 2列目:値

../_images/comp_dat_s2.png

図 11 入力ファイル例 組成データタイプがfe_compositionの場合

  • 組成データタイプがzeiseiの場合

    • ファイル形式:Excelファイル

出力ファイル:
ポート名:組成名_単位系。26元素x4単位系=最大104個
ただし各フォーマットのファイルに含まれていたもののみダウンロードできる。
../_images/decomposition_output_sample.png

図 12 出力ファイルの例(切り取られた元素の値)

  • 組成名はAl_Sol/Al/B/C_sol/C/Co/Cr/Cu/Fe/Hf/Mn/Mo/N/Nb_Ta/Nb/Ni/O/P/S/Si/Sn/Ta/Ti/V/W/Zrである。

  • 単位系は質量分率、質量百分率、原子分率、原子百分率である。

表 1 出力ファイル一覧

No

ポート名

内容

1

<組成>_質量分率

組成の質量分率。スカラー値を1ファイルに1行で出力

2

<組成>_質量百分率

組成の質量百分率[wt%]。スカラー値を1ファイルに1行で出力

3

<組成>_原子分率

組成の原子分率。スカラー値を1ファイルに1行で出力

4

<組成>_原子百分率

組成の原子百分率[at%]。スカラー値を1ファイルに1行で出力

5

合金種別_out

入力ポートの値を出力

6

組成データタイプ_out

入力ポートの値を出力

7

組成データ単位情報_out

入力ポートの値を出力

8

鋼種ID

組成データタイプがcct_matnaviの場合、組成データファイル内のmaterial_idを出力

※ 質量分率または質量百分率の時かつ合金種別が判別できる時かつ出力された質量分率値の合計が1.0であるときに、原子分率、原子百分率への変換が行われる。

表 2 出力組成一覧

No

組成名

cct_matnavi

fe_composition

zeisei

1

Al_Sol

2

Al

3

B

4

C_sol

5

C

6

Co

7

Cr

8

Cu

9

Fe

1

10

Hf

11

Mn

12

Mo

13

N

14

Nb_Ta

15

Nb

16

Ni

17

O

18

P

19

S

20

Si

21

Sn

22

Ta

23

Ti

24

V

25

W

26

Zr

  • (凡例)〇:出力対象、-:出力対象外

1

入力ファイルで指定するのではなく、バランス量で計算し出力する。

出力ファイル:
 ポート名:合金種別_out
入力ポートの「合金種別」をそのまま出力したもの
../_images/decomposition_input_kind_of_allowy.png

図 13 出力ファイル「合金種別_out」バランス量鉄(Fe)指定の時の例

出力ファイル:
ポート名:組成データタイプ_out
入力ポートの「組成データタイプ」をそのまま出力したもの
../_images/decomposition_input_file_type.png

図 14 出力ファイル「組成データタイプ_out」の例

出力ファイル:
ポート名:組成データ単位情報_out
入力ポートの「組成データ単位情報」をそのまま出力したもの
../_images/decomposition_input_unit_type.png

図 15 出力ファイル「組成データ単位情報_out」の例

出力ファイル:
ポート名:鋼種ID
組成データタイプが「cct_matnavi」の時にカラム名が「material_id」の値が出力される。
../_images/decomposition_output_materialid.png

図 16 出力ファイル「鋼種ID」の例

1.3.2. 合金組成生成

合金組成情報(分解)と逆で、入力された組成値を指定されたフォーマットのファイルにして出力する。出力ファイルのフォーマットの指定は「生成データタイプ」で指定する。

  • 現状、「脆性破壊(20180209版まで)」または「Thermo-Calc単平衡計算_スクリプト実行」への対応のみ実装されている。

  • 入力元素の単位は質量分率または質量百分率のみ対応している。原子分率、原子百分率を指定しても、質量分率および質量百分率への対応は行われない(機能未実装)

../_images/compostion_module.png

図 17 合金組成結合の予測モジュール図

入力ファイル:
ポート名:元素名_単位系。26元素x 4単位系 = 104個
ただし入力は全て非必須であり、入力したポートのみ変換の対象である。
../_images/decomposition_output_sample.png

図 18 出力ファイルの例(切り取られた元素の値)

  • 元素名はAl_Sol/Al/B/C_sol/C/Co/Cr/Cu/Fe/Hf/Mn/Mo/N/Nb_Ta/Nb/Ni/O/P/S/Si/Sn/Ta/Ti/V/W/Zrである。

  • 単位系は質量分率、質量百分率、原子分率、原子百分率である。

入力ファイル:
ポート名:組成データ単位情報
組成データに指定されている各元素の単位を指定する。
../_images/decomposition_input_unit_type.png

図 19 入力ファイル「組成データ単位情報」の質量分率を指定した時の例

単位情報は以下のどれかを指定する。

  • mass_fraction:質量分率(指定元素がバランス量含めて合計1となる組み合わせ)

  • mass_percent:質量百分率(指定元素がバランス量含めて、合計100となる組みあわせ)

  • atomic_fraction:原子分率

  • atomic_percent:原子百分率

入力ファイル:
ポート名:合金種別
合金のバランス量となる金属を指定する。無指定の場合Fe(鉄)が指定されたものとして原子分率から質量分率などへの変換が行われる。
../_images/decomposition_input_kind_of_allowy.png

図 20 入力ファイル「合金種別」バランス量鉄(Fe)指定の時の例

入力ファイル:
ポート名:温度条件_摂氏
生成データタイプがThermo-Calcを利用した単平衡計算などの場合に温度条件として使用される。摂氏系の温度を指定する。
../_images/composition_input_temperature_c.png

図 21 入力ファイル「温度条件_摂氏」の例

入力ファイル:
ポート名:温度条件_華氏
生成データタイプがThermo-Calcを利用した単平衡計算などの場合に温度条件として使用される。華氏系の温度を指定する。
../_images/composition_input_temperature_f.png

図 22 入力ファイル「温度条件_華氏」の例

入力ファイル:
ポート名:温度条件_Kelvin
生成データタイプがThermo-Calcを利用した単平衡計算などの場合に温度条件として使用される。絶対温度を指定する。
../_images/composition_input_temperature_k.png

図 23 入力ファイル「温度条件_華氏」の例

入力ファイル:
ポート名:生成データタイプ
出力ファイル「生成データ」がどのような種類のファイルであるかを指定する。
../_images/composition_output_file_type.png

図 24 入力ファイル「生成データタイプ」の例

データタイプは以下のどれかを指定する。

  • thermo-calc-singleEquilibrium:単平衡計算用スクリプトファイル

  • zeisei:脆性破壊ワークフローで利用されるエクセルの記述。

  • cct_matnavi:図 7 の様なCSV形式のファイル。1行目は元素名のインデックス、2行目に対応する組成値となる。(未実装)

入力ファイル:
ポート名:組成データタイプ
入力ファイル「組成データ」がどのような種類のファイルであるかを指定する。
../_images/decomposition_input_file_type.png

図 25 入力ファイル「組成データタイプ」の例

合金組成情報と組み合わせた場合に、組成データのタイプを受け取ることが可能である。ただし、この情報でトリガーされる機能は実装されていない。

入力ファイル:
ポート名:鋼種ID
組成データタイプが「cct_matnavi」の時にカラム名が「material_id」の値。
../_images/decomposition_output_materialid.png

図 26 入力ファイル「鋼種ID」の例

合金組成情報と組合わせた場合に、組成データタイプが「cct_matnavi」で、組成データに「material_id」カラムが存在した場合にその値が「鋼種ID_out」に出力され、それと連結してその値を受けとることが可能である。ただし、現在この情報でトリガーされる機能や後段への情報の受け渡しは無い。

出力ファイル:
ポート名:合金種別_out
入力ポートの「合金種別」をそのまま出力したもの
../_images/decomposition_input_kind_of_allowy.png

図 27 出力ファイル「合金種別_out」バランス量鉄(Fe)指定の時の例

出力ファイル:
ポート名:温度条件_摂氏_out
入力ポートの「温度条件_摂氏」の値をそのまま出力したもの
../_images/composition_input_temperature_c.png

図 28 出力ファイル「温度条件_摂氏_out」の例

出力ファイル:
ポート名:生成データ
入力ポート「生成データタイプ」で指定したフォーマットのファイル
../_images/decomposition_input_matnvi.png

図 29 出力ファイル「生成データ」の例(matnaviタイプ)

出力ファイル:
ポート名:鋼種ID_out
組成データタイプが「cct_matnavi」の時にカラム名が「material_id」の値が出力される。
../_images/decomposition_output_materialid.png

図 30 出力ファイル「鋼種ID_out」の例

1.3.3. クリープ材料特性分解

クリープ性能試験ワークフローで使用するパラメータの一つ、クリープ材料特性ファイル(XML形式)を構成する要素をタグと属性の組み合わせで分解してファイルとして値をその内容(スカラー値)とするモジュールである。

入力ファイルは一つ。出力ファイルは72個である。

../_images/creep_material_spec_decompostion_module.png

図 31 クリープ材料特性分解の予測モジュール図

入力ファイル
ポート名:クリープ材料特性
クリープ性能試験ワークフローのパラメータの一つ。材料特性を定義するXMLフォーマットのファイルである。詳細なフォーマットはクリープ性能計算ワークフロードキュメントのP.15を参照する。
出力ファイル
ポート名:母材部分、熱影響部分、溶金部分それぞれの係数などの数値22個、計66ポート。
XMLのタグと属性から母材、熱英胸部、溶金部、それぞれの係数などの数値をファイルとしたもの。
../_images/creep_material_spec_component.png

図 32 クリープ材料特性を分解した、ポート名「母材_Hayhurstモデルの係数A」の例

1.3.4. クリープ材料特性結合

クリープ材料特性分解で分解されたタグと属性の組み合わせによるファイルをまた元のクリープ材料特性ファイルにするためのモジュールである。

../_images/creep_material_spec_compostion_module.png

図 33 クリープ座色湯特性結合の予測モジュール図

入力ファイル
ポート名:母材部分、熱影響部分、溶金部分それぞれの係数などの数値22個、計66ポート。
XMLのタグと属性から母材、熱英胸部、溶金部、それぞれの係数などの数値をファイルとしたもの。
../_images/creep_material_spec_component.png

図 34 クリープ材料特性を分解した、ポート名「母材_Hayhurstモデルの係数A」の例

出力ファイル
ポート名:クリープ材料特性
クリープ性能試験ワークフローのパラメータの一つ。材料特性を定義するXMLフォーマットのファイルである。詳細なフォーマットはクリープ性能計算ワークフロードキュメントのP.15を参照する。